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平成20(ワ)27920 [DD全般]

仕事柄、裁判記録というものに普通の方よりは比較的よく接します。タイトルはとある裁判の事件番号、詳細は裁判所サイトで見ることができます

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81978&hanreiKbn=07

特許権に関わる民事訴訟で、原告は株式会社オビツ製作所、被告は株式会社ボークスです。まだやってたんですねぇ ^^;

原告の主張は原告が有する特許を被告が侵害してるのでその停止と損害賠償、被告の主張は侵害行為はない点と原告の特許は無効であるということです。

裁判所の判決は侵害行為は無し、訴訟費用は原告が支払うとなっています。いわゆる原告の負けですね。


判決文は非常に長いですが、大半は原告被告の主張で裁判所の判断は最後の数枚、この中でボークスのドールはオビツ特許の要件の一部が無いと認定し、均等の範囲にも入らないので侵害行為は無し、従って原告の主張は退けるとなっているだけで、特許の有効性に関してはふれていません。

「特許の要件」とかいうと非常に難しい感じがしますが、簡単に言うと特許というのはいくつかのパーツ(場合によっては一つだけの場合もありますが)からなるプラモデルのようなもので、そのうちの全部のパーツが揃っていれは「特許の権利範囲内」であって、いわゆる侵害行為にあたります。

10個のパーツがあるならその全てが揃っている必要があって、一つでも欠けていれば権利範囲外となります。しかしそれではあまりに権利者に酷ですので、その欠けたパーツと同等のパーツがあるかどうか(実際にはもっと難しい判定ですが)を裁判所が判断し、ある(これを「均等の範囲」といいます)と判断すると特許権侵害となります。
これは「均等論」といって、非常に難しい判断です。特許というのは法律文書であると同時に技術文書ですから、その技術に長けた裁判官でないと判断できません。今回の判断では、類似部分は「均等の範囲ではない」と認定され、結果として権利範囲外となっています。

この判決文からおもしろいなと思ったのは二つ、一つはオビツが主張する損害額です。

(ア) イ号製品について
 a 被告がイ号製品自体を製造・販売して得た利益額
   (a) 販売数量 2万7360体
   (b)1体の販売価額 2万1000円
   (c) 販売総額 5億7456万円
   (d) 利益率 50%
   (e) 利益総額 2億3728万円
b 被告がイ号製品を使用した完成品人形を販売して得た利益額
   (a) 販売数量 2万7000体
   (b) 販売総額 13億3548万円
   (c) 利益率 60%
   (d) 利益総額 8億0128万8000円

(イ) ロ号製品について
a 被告がロ号製品自体を製造・販売して得た利益額
   (a) 販売数量 1万3440体
   (b) 1体の販売価額 1万9800円
   (c) 販売総額 2億6611万2000円
   (d) 利益率 50%
   (e) 利益総額 1億3305万6000円
b 被告がロ号製品を使用した完成品人形を販売して得た利益額
   (a) 販売数量 6600体
   (b) 販売総額 2億9496万円
   (c) 利益率 60%
   (d) 利益総額 1億7697万6000円
(ウ) 以上の合計額 13億4860万円

イ号とかロ号というのは、裁判の対象にふる記号で、イ号はDD素体、ロ号はMDD素体ですね。

ちょっと驚いたのは利益率の高さ、通常この手の裁判での利益率って営業利益(粗利(売上高-売上原価)-販売費及び一般管理費)なんですが、素体で50%、限定(完成品人形)で60%もあるんだなと・・・

これはオビツの主張ですから正しいかどうかは不明ですし、その根拠もでていませんので怪しい部分はあるんですが、全くの素人ではなく業界の片方の雄が出してきた数字ですから、それなりの信憑性があるのも事実ではないかと・・・・

いわゆる「おもちゃ」の利益率は比較的高い(値引きとか中間マージンとか想定して)と聞いたことがありますが、実際こんなものかも知れません。

自分の勤める会社などは素材屋ということもあって利益率なんて5%とか10%とかざらなのに^^;

もう一つはボークスがオビツの特許を無効であると主張している点です。
出願時に公知であった(同じ構成要件を持つ人形がすでにあった、「新規性が無い」といいます)、或いはそれからさしたる苦労もなく作ることができる(これを「進歩性が無い」といいます)と主張し、故に特許が無効だと・・・

裁判所はこの点については判断をしていません。よっていまでも特許は有効に存在してます。
ただ、ボークスのドールはこの特許の権利範囲外(判決)で、なおかつすでに公知ですから発売前に特許出願していなければ特許性がありません。ここは詳しく調べてないですが・・・・

こうなると怖いのは業界への第三者勢力の進出です。
すなわち、生産力や造形力と販売力を持った第三メーカーがボークスの主張に当たる素体で市場に進入してきたとき、オビツの特許では抑えられない、そしてボークスと同じなら更に権利範囲外(誰でもできる)状態になってしまいます。

実際にはこんなに簡単ではないですが、基本特許(この場合オビツの特許)が無効になったり、それを回避したものが正当であると裁判で認められると・・・・

特許係争ってそう言う負の面もあるのですが、ボークスはかなり辛辣に特許の無効性について主張しています。オビツは反論してますが、これが争点となったときどういう判断がでるか・・・・、その結果によってどういうリスクが発生するか・・・・、十分検討した上でやりあっているのであればいいのですが。

何にしてもさして大きな市場ではない(前述の損害額からその倍であったとしても利益総額は30億円程度です)のだから、もう少し仲良く共存共栄の道を進むことはできないものでしょうか、と考える今日この頃です。

最後に蛇足ながらw

このような可動人形用胴体を使用したフィギュアにあっても,様々な身体形状,特に女性を模写したフィギュアにあっては胸の形状・大きさが様々である。特に,胸(乳房部)が極端に大きい形態が昨今需要者から要求されている。また,これはフィギュアに限らず,美術デッサン用のモデルとして利用される可動人形用胴体であっても同様である。

特許明細書【発明が解決しようとする課題】の項にこういった記述があるとか・・・・

オビツGJ!!w


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コメント 7

UPL_2010

なるほど、ツイッターのつぶやきの根拠はこれだったのですね。キャラもののPVCフィギュアの利益率は割引して10-25パーセント位らしいので、かなりのものです。それにしても、この裁判沙汰、某から始めたんでしたっけ?仲良くやって欲しい、というのに同意ですね。
一般会員のポイント1パーセントに下げてる場合じゃないですよ、某。
by UPL_2010 (2012-02-13 21:05) 

ぺるしゃ

ウチも粗利はそんなもんですね~
もっと多いかも。
製品の性格から研究開発費が膨大なので純利益は損益分岐ギリギリですが(^^;
by ぺるしゃ (2012-02-13 22:15) 

おたまだっかー

オ○ツの特許は腰が抜ける(とれる)ので、服が着せ(脱がせ)やすいというのもあったとおもいますが・・・。某の1/6は胸部は抜けますが、腰部はぬけませんよね。
うちのオ○ツのは腰の差すところがめげて、ストッキングを穿かせたくらいで胴体切断が・・・(苦笑)
by おたまだっかー (2012-02-15 21:47) 

FetishRoom_Master

>UPL_2010さん 
ちょっと気になった内容でしたねぇ>利益率

過去の経緯は十分調べてないのですが、確かそうだったような・・・、業界ではあちこちに噛みついているような話を・・・
実質的な値上げですものねぇ>ポイント改悪

by FetishRoom_Master (2012-02-19 08:50) 

FetishRoom_Master

>ぺるしゃさん 
まあ、粗利ならその程度は珍しくないですよね。
特に人件費のかかる業界は大変です。


by FetishRoom_Master (2012-02-19 08:51) 

FetishRoom_Master

>おたまだっかーさん 
初コメントいただいたのでしょうか、ありがとうございました

オビツの特許も今度ゆっくり調べてみたいですねぇ。
世の中には「ペテント」も多いですからw

by FetishRoom_Master (2012-02-19 08:53) 

FetishRoom_Master

>らいむさん 
nice、ありがとうございました^^

by FetishRoom_Master (2012-02-19 08:53) 

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